第8章 性欲(イルミ/童貞/甘)
「え…何これ…」
朝目覚めてベッドから起き上がったリネル。
鼻につく独特の臭いのある粘性の白濁液に目を見開いた。
犯人は隣の男しかあり得ないのはわかっても、今まで同じベッドで眠っても指一本触れて来なかったその男と何がどうしてそうなったのかの一切の記憶がなかった。
仕事の付き合いで時たま同じホテルの部屋を共有する事があるが、この男は不思議なくらいリネルに目もくれない。
変に性欲の強い男よりは楽だとは思っていたが、いよいよそういう事になったのか?ならば何故記憶がないのか?リネルは朝から頭を回転させていた。
「リネル、昨日遅かったから先寝ちゃった」
「イルミおはよう、うん。…ねぇ、コレ何?あんま覚えがないんだけど…」
「え?…あ、夢精?」
「はあ?!夢精って…」
「面倒だよね、これ」
「え、ちょっと待って!なんで夢精なんかするの?」
驚きイルミを顔をじっと見ながら声を大きくするリネルに、イルミはきょとっとした顔で言った。
「なんでって…普通じゃないの?」
「いや、普通ないよ!もうそんな歳じゃないでしょ!」
「え?歳関係あるの?」
「だって、…そんな溜まらないでしょ思春期じゃあるまいし…」
「溜まるよ物理的にも生物的にも」
「でも、Hしたりせめて自分でシたりするでしょ?」
「しないよ、そんなの」
「え?!自己処理もしないの?」
「うん、したことない。あんま興味ないんだよねそういうの」
「…へぇ……」
「自分でしないし、溜まったら夢精。普通じゃない?」
「…普通だけど普通じゃないよ…」
真面目に返答を返され、リネルは語りかけるようにイルミの顔を覗き込んだ。
「…興味なくてもせめてさ、自分でシてたら夢精しないと思うよ?」
「んー、やり方とかよくわかんないし」
「キルアに聞けば?」
「え、キルしてるのかな?」
「…多分、歳の割には色気あるし」
「そっか、じゃあ聞いてみようかな」
「え?!ほんとに?兄としてそれでいいの?!」
「聞けばって言ったのリネルでしょ」
「…はぁ…、仕方ないな。手伝ってあげるよ、今夜」
リネルは小さな溜息をついた。