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〈短編〉H×H(裏中心)

第17章 お願い(イルミ/シリアス/裏なし)


「リネルお嬢様、ゾルディック家のイルミ様がいらっしゃいましたよ」


リネルの広い部屋に専属メイドがやって来る。
そして用件をどこか嬉しそうに告げる。自身の事のように瞳を輝かせて来訪者の事を言うのには理由がある。

世界でも指折りの富豪家であるリネルの父。
ただそれは由緒書きのつく昔からの財閥ではなく、裏の世界でその名を聞かせる存在。故に暗殺稼業を営むゾルディック家とは親交があった。
何故なら裏世界では邪魔な存在、気に入らない存在の暗殺は当たり前、父はゾルディック家のいい得意先とも言えた。

そんな家庭に育ったリネルは幼い頃からゾルディック家の子供達と何度も遊んだ事があった。父親が暗殺依頼をしにゾルディック家を訪れる際に連れられて行き、そこで執事を交えてその家の子供と遊んだりしていた。

その中で弟達の面倒を見たり、時には親達に混じり仕事の話に参加をするイルミはリネルの目に 兄のような憧れのような、そんな存在に思えていた。
事実リネルはこの家の子供達以外に他の子供と接する機会など殆どなかったし、幼い頃のその感情が恋愛感情に変わるのにも時間はかからなかった。


「今日はお嬢様の16歳のお誕生日ですしね、覚えておいでだったんですね!良かったですねお嬢様」


狭い世界で生きるリネル、メイドとの話といえば限られている。メイドはとうの昔からリネルの気持ちを知っているのだ。

しかしはしゃいだ声を出すメイドの側でリネルは黙り込んでいた。イルミという人間をずっと見てきた、どんな人物か自分なりには知っている。
合理的にしか動かないし感情なる物は少し欠落しているように感じる。しかし弟達に見せる面倒見の良さや幼いリネルとも遊んではくれた、優しい所もあるんだと信じてはいた。

ただ約束もなしにイルミが自分からリネルを訪ねてくるなど初めてであり、リネルの脳裏には一つの疑念がよぎっていた。








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