第16章 仮宿(ヒソカ/セフレ)
数時間後。
「……ん、」
「起きた♦︎?」
ベッドの中でリネルは目を覚ます。目の前にはヒソカの顔が大きく広がっていた。あれから意識を失っていたらしい。少し身体を動かすと背中や首元に鈍い痛みを感じた。
「…痛っ……」
「手当しといたよ♣︎」
先程の荒々しい行為を思い出し、リネルは頬を膨らませながらヒソカに言う。
「さっきのアレは、あまりにも酷いんじゃない?」
「リネルがあんまり美味しそうだから、つい興奮しちゃって…、ゴメン♥︎」
口先だけでそう述べた後、ヒソカはリネルのベッドからスッと起き上がった。
「ボクの服洗濯しておいて♦︎」
「血ってなかなか落ちないからなぁ」
「頼むよ♣︎」
リネルは小さな溜息をつきつつも 内心少しの優越感を覚える、これはまたここへ来るというヒソカの意思表示ととれる。
ヒソカはクローゼットの中から前回置いていった洗濯済みの自身の服を身に纏う。
サラサラした前髪を揺らしながらドレッサーの前に腰掛けると、そこに置いてあるヘアワックスへ手を伸ばし それを指先に絡め取りながら溜息混じりの声を出した。
「少しゆるいし匂いが甘いな♠︎」
「オンナ物だしね」
「これから鼻の効く可愛いコに会うから。…どこでなにしてたのかバレちゃうかもなぁ♦︎」
また少しの優越感、ヒソカの事はそれなりにはわかる。リネルは未開封の男性物のハードワックスを差し出しながら言った。
「はい。ヒソカの事だからどうせ男のコなんでしょ?」
ヒソカはそれを満足そうに受け取った。
「…ククッ、君に会いたいっていうボクの直感はやっぱ正しかったな♦︎」
「そぉ、良かったね」
ヒソカは慣れた手つきで髪を後ろに整え上げ 顔にメイクを施す。
支度を終えると玄関先でいつからか定例化した台詞が聞こえてくる。
「じゃ、行ってくるね♦︎」
「行ってらっしゃい」
「…次は生理中に来ようかな、生理きたら教えてよ♣︎」
「こないかもよ、中に出すし」
「クククッ、♠︎」
笑顔で見送るリネルを見ないまま、ヒソカはあっさり部屋を出る。バタンと無機質なドアの音が2人を遮断した。
「そろそろ狩り時かな♠︎」
fin