第16章 仮宿(ヒソカ/セフレ)
「ただいま♦︎」
ヒソカは当然ようにそう言うがここはリネルの部屋。玄関でそんなヒソカを出迎える。
服や身体に飛んでいる少量の返り血には気付かないフリをしてリネルは笑顔で いつも通りに言葉を返した。
「おかえりなさい」
「久しぶり♠︎」
掴み所がなく気まぐれなヒソカが自分の所へ時々顔を出す、例えるならば野生の猫が少し懐いたかのような気分だった。
都合よく利用されているとも言える。
それでもこちらも暇つぶしにはなるし、この関係はお互い様といえばそう言えた。
「…どうしても君に会いたくなっちゃってサ♦︎」
「え?……んぅっ!!…」
強引に身体を壁に押し付けられたかと思うと 強めに唇を重ねられる。すぐに唇を割られヒソカの舌がリネルの口内に押し入る。舌を絡め取られると甘く歯を立ててくる。
貪るように求めてくるヒソカに リネルは苦しそうにしながら言った。
「いきなり…何っ…ッ」
「ヤラして♠︎」
「会いたいじゃ、ないよねソレっ」
「会ったらヤりたくなるだろ♣︎」
ヒソカは荒々しい事の運びとは逆に 有無を言わさぬ余裕の顔でリネルを説き伏せる。
今更拒むつもりもないのだが 久々に来たと思えばいきなりこれではあまりにも唐突。ヒソカは膝でリネルの太ももを強引に割るとスカートをたくし上げ すぐに手を差し入れる。
このまま玄関先でとはリネルとしてもさすがに複雑で 無意味と知りつつヒソカの手を制止する。構う事なく 指先を上に滑らせるヒソカの目元に薄くついた血がリネルの目にとまる。
「…せめてシャワーくらい浴びて?血ついてる」
「気にしないでいいよ」
「やだ、どこの誰かもわからない人の血なんて気持ち悪い」
「奇遇だね、ボクも誰のかわかんない♠︎」
ヒソカらしい。
大方人を殺し 半端に興奮した身体のままここを訪れたのだろうと思う。興奮の対象が自分ですらない、やはり複雑ではある。