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母親代理人

第10章 変わる環境と気持ち





「…そんで、戻って来たの?
あんたね、一応でも仕事中なのよ
あんたの仕事穴埋めしてんの…、
誰だと思ったるわけ?大体さ…」



「ごめんなさいって、泣いちゃう」



行くところなくて、
事務所に戻ってきた私。


荷物も何もかも、



あの家にあるから

戻らなきゃいけないのは
仕方のないことだけど。



「私が居たら喧嘩になる
皆を不安にさせても、安心して
あげられない。…いる意味、ないよ」



母親代理なんて、そんな簡単なこと
じゃない事もちゃんとわかってる


弱音吐くことも、


咲和さんの事だって。




「……ダメ、だった…」




私なんかじゃダメだって、



そう実感させられた。






「…母親代理人なんてさ。
結果論で言っちゃえばそんなもんよ
母親居なかったりすれば、そりゃあさ。
ひねくれたり生意気だったりするけど
結局、私達は母親代理人なのよ
彼らの苦しみを薄らいでやるしか出来ないの
今回は特殊な事例なだけ
情が沸くようであれば私が代わるよ」



三個上の先輩は、そう言った。


若さで言えば私なんか、
何も知らない若造だってこと。




「あんたには悪いって思ってるのよ」


「え?」



「あんたには母親居ないでしょ
環境も今の所と同じ感じだしね
そこを引き受けてさ。
その母親代理人だって…………」


「大丈夫、です…」



俯き黙り込む私の頭を、



先輩は優しく撫でてくれた。


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