第6章 帰宅
とりあえず和也くんと智くんと
人の少ない公園へ行った。
それから、落ち着いた和也くんに
これまでの話を聞いた。
「追いかけたら、父さんに追いついて
やっと話が出来るって、思った。
母さんや皆を不幸にしたあいつから
聞ける話なんて、ちっちゃいの。
もう家族なんか要らねぇって、
何もない、楽でいたかったんだって
馬鹿らしい言い訳をいくつも並べてさ
ごめんって俺らにすがりついてきた
ムカついた、殴りたかったよ
でも、でも…っ!
出来なかったんです、一発も…」
震える手の甲に
ぽたっと涙が落ちた。
「母さんは、知ってんだって」
「え?なに、を?」
「母さん、捨てられたこと
それに、もう2人は、
2人で仲良く暮らしてんだって
捨てたのは、母さんだったんだ」
和也くんは堪えていた声を、
構わず出した。
智くんは唖然としてて。
私は、どうしたらいいか
頭が真っ白になった。
「嘘だよ、そんなん。
だって、母さんは…、さ」
「…怖くて、拒みたくて、
暴れ回ったけど、変わるはずもなく
父さんは、無表情で俺らに言ったよ
家族なんかじゃなくなった、
母さんは戻らないよ、って………」
「そん、な…」
和也くんは涙いっぱいの
目を私に向けた
「……、」
「和也くん、」
「だけは、
俺らから離れないで…」
震える体を、私は、
無意識に抱きしめた
何も出来ないのに、
これが、これが、
仕事だなんて。
神様は酷すぎるよ…。