第15章 キミノトナリデ
「誰だって寂しかったさ。
母さんが行っちゃったあの日からも、
父さんがここから居なくなった日も、
全部、まるでお別れの日みたいだった。
でもまたいつか会えるなんて期待して、
俺らは少しだけ甘えてましたね。
こんな日のこと、翔兄ちゃん想像した?」
もたれかかったまま、
和は顔も見ずに俺に問いかける。
「……俺は、してなかった。」
泣きすする声が聞こえて、
俺は隣に座ってぽんと頭に手を置いた。
ただ、同情したんじゃなくて
お前だけじゃないって知らせたかった。
必ず訪れるその日すら、
きっと告げられる今日の日も、
俺らは"きっと"来ないと思い込んだ。
「…母さんが行く前に、
智兄ちゃんが事務所に行ったでしょ?
あの日さ、俺、ふざけんなって思ったんだ
要らねぇって。立ち入れさせたくなかった
でも、結局、俺らはこんなふうに…」
本当は分かってた。
貴女とずっとなんて居られない。
手の届きそうな距離で、
いつも少しだけ遠かった。
「なあ、兄ちゃん」
「なに?、」
「あのさ。俺………」