第19章 銀色の鎖(girl's side)
それからしばらくの間、私は銀色の彼の髪をぼんやり眺めながら、これからどうなるのだろう、と考えていた。
彼の持つ氷嚢が、かすかに音を立てる。
私が「下りた」ゲームは、さらに複雑な様相を呈している。
いや、「下りた」はずの私は、さらに複雑な関係に足を踏み入れてしまった。
あの男だけではない。
私も同罪だ。
年端も行かぬ男子生徒に抱かれて快楽を感じるような。
あの男が教師をやめるようなことになったら、私もやめるべきなんじゃないだろうか。
「先生」
「え?」
「先生は……学校やめたりしないよね」
どうして私の考えていることがわかってしまったのだろう。
心臓をぐっと掴まれたかのようだった。
「愛里先生は、イトウ先生と違う。愛里先生は、俺が一方的に、脅迫したようなものだから。先生は、悪くない」
「……」
「俺は絶対誰にも言わないから、先生は、学校をやめないで」
銀色の鎖が私を縛る。
でも縛られることにこんなに喜びを感じるなんて。
甘い毒に犯されているのかもしれない。
もう、後戻りはできないほどに。