第13章 特進クラス争奪戦(銀八side)Rー18
家に帰って、着替えて、勉強道具を持って、再び家を出る。
一応、目立つ頭はキャップをかぶって隠す。
意外に銀さん、冷静じゃねえの?
思わず自分ツッコミ。
なぜか、愛里先生は絶対に約束を守る、という確信があった。
四月から今まで、愛里先生が生徒を適当にあしらう場面をほとんど見たことがないからかもしれない。
俺とのとんでもねー契約も、結局は守ってくれてるようなものだし。
ファミレスに入ると、幸い席はさほど混み合っていなかった。
パフェを頼んで、一人で勉強を始める。
ファミレスのテーブルって、広いから勉強しやすいんだよな。
今日先生に迫ったとき、先生が首を縦に振らなかったら、俺はこの前ホテルでこっそり撮った二人の写真を見せようと思っていた。
完全に恐喝だ。
だけど先生は、そんなの見せなくても俺の言うことを聞いてくれた。
ちょっと拍子抜けしたくらいだ。
そんなに俺に抱かれるのが抵抗ないってことなのかな。
たぶんそれは俺のことが好きってことじゃなくて、好きでない男に身体を開くのに慣れてるってことなんだろう。
嬉しいような、哀しいような、複雑な気分だ。
そんなことを考えながらペンを動かしていると、頭の上から声が降ってきた。
「またパフェ食べてるの?本気で、糖尿病になっても知らないわよ」
思わず顔を上げる。
俺の女神が降臨していた。
俺が何も答えずにいる間に、先生は向かいの席に座った。
仕事の時とは違う、ラフな服装をしている。
メガネをかけているのは、一種の変装のつもりかもしれない。
「先生、メシ食ったんすか」
「食べてないわよ。おなかすいたわ」
先生はメニューから目を離さずにそう言った。
「じゃあ、俺もメシ食います」
「パフェだけ食べてたの?あきれた」
俺は頬杖をついて、メニューに目を走らせる先生の顔を眺めた。
ああ、本当にこの人が俺の彼女だったらな。
今すぐ死んでも後悔しないな。