第1章 始まりは突然に(銀八side)
教壇の上に立った女教師は、バイト先で見かけるそこらのキャバ嬢より、正直言ってレベルが高かった。
光る切れ長の意志の強そうな瞳は人目を惹くのに十分だ。
柔らかい少し巻いた髪の毛が胸の辺りまで下りていて。
パンツスーツに隠れたスタイルは抜群、胸もそこそこある。…あ、もうちょっとあっても俺はいいんだけどね、うん。
「じゃあ、日直、号令をかけて」
あー、声もいいな。
俺は一人でニヤニヤしながら立ち上がった。
あー、この一年は、この授業寝ずにこの先生見てるのがいいかも。
児童保護施設で育った俺が高校に行けるのは、育ての親である松陽先生のおかげだ。
俺は売られたケンカはどこでも買うし、見てくれもまぁこんなだし、普通なら学校側が受け入れてくれるとも思えない。
でも、松陽先生は、
「頭のいいお前を高校に行かせたいんですよ。今は高校出てないと、出世払いもしてもらえないから」
といつもいってくれていた。
今も財布の中に写真が入ってる。この白い頭が地毛だって証明できるよう、子供の頃からの写真を松陽先生はまとめてくれていた。その内の一枚。先生と俺が並んで写っている、唯一の写真だ。
松陽先生がこの世を去ってからも、その意志を継ぐ人が現れて、施設を続けてくれている。
(これがまた松陽先生とは全ての意味で真逆のイカツいババアなんだが、まあそれはおいといて)
施設の中では共同生活だから、自分の個室なんてない。
でも高校生になったのだから、と、施設の隣にある古い住まいを提供されることになった。もともとは先生の両親が使っていたところだそうだが、そのまま朽ちてしまってもおかしくないような建物だった。
(実際子供の頃の俺らはお化け屋敷ごっこにその家を使って遊んでいた)
一応自分が寝られるベッド、勉強できるような(あまりしてないけど)机を入れてもらい、使おうと思えば台所も使える。
生まれて初めて自分の部屋がもらえた嬉しさは格別だ。
これからは1人エッチをしている時に誰かに見られる心配もしなくていいし、AVも堂々と見られる。
女を連れ込むこともできるかもしれない(廃屋寸前でもいいなら、だけど)。
え?下ネタだけじゃねえかって?
そりゃそうだろ、高校生の男子の考えることなんて、基本ソレだ。