第12章 *なら及川、お前が退け【岩泉一】ハイキュー!!*
「……何してんだ、お前」
翌日。
廊下で及川を見つけた俺は何しているのかと近寄った。
……けどそこに居たのは及川だけじゃなくて、あの女まで居たのだ。
このチャラい男の事だ、何か変な事をしてたに違いない。
そう思った俺は最初軽く話しかけるつもりだったのに、出てきた声はかなりドスのきいたものになってしまった。
「ああ岩ちゃん!今丁度〝岩ちゃんより俺のがいいと思うよ?〟って説得を、」
「どこが良いんだボゲ!!」
「グフッ!!」
「余計な事言ってんじゃねぇ!」とも付け加え、更に頭突きをかます俺。
周りに居た生徒の視線を浴びても全く気にならない。
けど一つだけ気になる視線があった。
それはあの女だ。名前も知らない俺の意中の人。
側に居たのだから見られて当然なんだけど……こんな暴力的な場面を間近で見せてしまった事に後悔&不安になる。
「悪りぃ、変なとこ見せて」
「い、いえ……」
「そうだよ岩ちゃん!暴力はんたーい」
「うるせぇ!」
「ギャッ!!」
「やべっ!」
またやってしまった!と慌てて振り返れば、女は困ったように立ち尽くしていて居心地の悪さを感じた。
とりあえずこのまま放っておいたら〝岩泉=暴力〟ってイメージを付けられそう。
それは勘弁!って、俺は後先考えずに女の手を引いてこの場から立ち去った。
背中に「岩ちゃーん!いきなり手は出しちゃダメだよー!」という腹立たしい声を浴びながら。