第2章 いせかいにようこそ
その姿がまた絵になっていて、ついつい見つめてしまう。
顔だけでなくスタイルや仕草まで綺麗で美しい。
天は二物を与えずと云うが、彼女を見ていると嘘っぱちだと思わずにいられない。
「まあ、流石に違うか……」
それに声まで凛としていてわたし好みだ。
多分わたしが男ならリモーネに惚れているんじゃないだろうか。
「ねえリモーネどーしたの?なんか難しい顔してるー」
ルルカの問い掛けに何でもないと答え、わたしの方に向き直る。
「記憶喪失か……一時的なものなら良いんだが。何にせよ、宿や食事のアテはあるのか?」
宿、食事、考えてもいなかった。
お金なんて無いしサバイバル生活?
いや、どう考えても自分が狩りしてる姿なんて想像もできない。
というか武器も何もない状態で動物なんて襲ったら逆に喰われるに違いない。
かといって知らない野草なんか食べるなんてのも怖い。
間違って毒草の類を食べてのたうち回りながら死ぬなんて絶対に嫌だ。
「その顔だとアテはなさそうだな」
街中のゴミ箱でも漁ろうかと考えた所で、リモーネが苦笑を交えそう言った。
どんな顔をしているというのだろうか、間抜けな顔だったら恥ずかしい。
『あはは、なーんにもないデス……』
自嘲気味に笑いながら正直に答える。
するとリモーネは、わたしにこんな提案をしてきた。
「なら、暫く私の店に住まないか?今日はもう宿に泊まることになるが、明日には此処を発つつもりなんだ。」
『えっ……そんな、良いんですか?』
住む場所を提供してくれるのだ、こんなに有り難いことはない。
だが、なにもお返しができないという後ろめたさに躊躇してしまう。
「嗚呼、ただその代わりと言っては何だが少しばかり店の手伝いをしてくれたら有り難い」
『やります!お手伝いでも何でも、わたしにできることならさせてください!』
その言葉にわたしは即答する。
ギブアンドテイク、そういうことなら断る理由などない。
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