第2章 いせかいにようこそ
本当は自分自身が後ろめたさを感じたくないだけなのではないかと、少しだけ自己嫌悪に陥る。
でも気にしない、というか気にしたらわたしじゃない気がした。
そうさ、わたしはお気楽でめんどくさいことは考えないような楽天的なヒロインなのさ!
なんて訳の分からないことを考えてみる。
「さて、そろそろ陽も落ちる頃合いだ。宿に行って身体を休めるとしよう」
綺麗に舗装された街並みが、揺らめく水面が、傾きかけた太陽から溢れだす朱に染められ輝いて見えた。
「あー……サキ達帰っちゃうの?バイバイなの?また来るよね……?」
そして隣には涙ぐんだルルカの姿。
あらまあ何これこの子可愛い。彼女は子犬のような表情でわたし達を見ていた。
『また遊びに来るよ!またね、ルルカちゃん!』
むぎゅうっと抱きつけば、えへへと照れ笑いを浮かべた。
ほんの少しひんやりとした皮膚がわたしの剥き出しの腕に触れる。
元来、水に住む種族だから体温は低めなのかも知れない。
「嗚呼、今度はまた近い内に王都に来る予定だからまた会えるぞ」
その言葉にルルカはぴょんぴょんと喜び、またねと手を振ると運河に飛び込んで見えなくなってしまった。
「さあ、手早く荷物も運び込んでしまうとしよう」
今更気づいたのだが、リモーネの背後には大量の食料品の類が置かれていた。
何だこの量、多分これ普通に暮らすなら半年は保つんじゃないだろうか。
間の抜けていたであろうわたしの顔を苦笑しながら眺め、手早く荷物をまとめた彼女は軽々とそれらを持ち上げてしまう。
色白で美しい外見に似合わず力持ちのようだ。
わたしも慌てて立ち上がり、荷物をどれか運ばせてほしいとお願いする。
彼女は僅かに逡巡した後に比較的軽そうな麻袋をひとつだけ渡してくれた。
.