第2章 いせかいにようこそ
「ワタシはルサールカのルルカ!この運河に棲んでるんだー」
彼女、ルルカは笑顔で足をバタつかせながら軽い自己紹介をしてくれた。
『わたしはサキ。気づいたらこの街に立ってたの。それより前のことはなんにも覚えてないや……』
そっかー、と呟くルルカ。
「記憶喪失なのかもねー、大変だねー」
軽い調子で返してくる。確かに大変なことなのかもしれないが実感がわかない。
『とりあえずこの国のこととか、いろいろ教えて欲しいな』
そういった途端ちょっと困ったような笑顔になってしまう。
なにかマズいことでも訊いてしまったのだろうか。
「えっとね、ワタシも実はあんまり詳しくないんだー」
字も読めないし、とすこし恥ずかしそうに笑うルルカ。
でもね、と何かを思い出したように笑顔になる。
「この街の名前はチカトリーチェだよ!前にリモーネが言ってたの!」
リモーネというのは誰なのだろう。そもそも人物を指すのかさえわからない。
「リモーネはね、物知りで優しくて強い女の人だよ!たまーに食料とかを買いに来るとついでにお話に来てくれるの!」
にこにこと楽しそうに笑っている。よっぽど好きなのか説明の時の身振り手振りが大きくなってきた。
尤もそのジェスチャーでは何も伝わってはこないのだが。
『良い人なんだね、ルルカちゃん嬉しそうだもん』
彼女はまた、えへへーと可愛らしく笑う。先程から良く笑う子だ。
「リモーネならきっとサキにも優しくしてくれるよー!いろんなことも教えてくれるかも!」
聞けば聞くほど良い人そうだ。願わくば会ってみたい。
でも、頻繁にここに来るわけではないようだから難しいのかも知れない。
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