第1章 俺の前では
ある日の深夜、目が覚めた俺は
喉が渇いたので冷蔵庫へ
「…?」
そこにの姿はない
あいつ…どこ行っちまったんだ
俺はすぐに家をとびだした
「?!」
玄関を出るとぶつかったのは
「お前…どこいってたんだ」
「…銀さん」
「危ねぇだろ!こんな夜中に」
「…ごめん」
街灯に照らされるその目は
いつもより影があった
静かな商店街の中
俺はを抱きしめた。
「…迷惑じゃねぇ、だからひとりで片つけようとすんな」
「…」
抵抗もしない
抱きしめ返しもしない
ただ静かに
泣いていた。
「傷、前より増えてんじゃねぇか」
俺は腕を引いて袖をめくりそういった
何日間もいつもこんな時間に出て行ってたのかよ
驚いた顔をするそいつは涙を流しながら
「なんで知ってるのよ」
なんていう
「女の子なのに、一人で仕返しでもしたつもりか?銀さん男だぜ、それくらい格好つけさせてくれや」
「でも、今日は感情的にならなかったよ」
「え?」
「銀さんたちが家族だと言ってくれたから、わたしお願いしてきたの、どう思ってもいいから、銀さんたちの前では何もしないでって、それだけでいいからって」
そう言って笑うは強く見えた。
「お前…」
こいつのことだ、何言われても
手ぇ出されても、我慢したんだろう、俺たちを傷つけないために
俺は自分が情けなく見えて
またこいつを抱きしめた。
「銀さん」
フフッと笑いながら、涙声で言う俺の名前は
こんなにも寂しいのか
「…ずっと、寂しかったな。」
「…」
「もう、強がる必要はねぇよ、俺がずっとそばにいるからよ。いつでも泣けばいい、わがままだって少しくらい聞いてやる。だからもうそんな悲しい笑顔で泣くな」
「…っ」
抱きしめ返されて伝わる振動
「お前ホントは泣き虫だもんな」
今までひとりで生きてきたこいつに
冷たさしか知らなかったこいつに
「……銀さんあったかい」
「あたりまえだろ?いつでも抱きしめてやらぁ」
俺が暑過ぎてうざいくらい教えてやる
「明日も?」
「あぁ、明後日も明々後日もだ」
家族ってのは、大切な人ってのは
こんなにも幸せで暖けぇんだって。