第1章 俺の前では
帰り道
「んだよ、結局神楽たち来なかったじゃねぇか」
「神楽ちゃん、かわいいね」
「どこがだよ」
「ふふ、仲良しなのね」
「はぁ、ようやく笑ったか」
「へ?」
吹き出して笑う顔は綺麗で
なんだか嬉しくなった。
「あらあら、どこでそんな綺麗な着物手に入れたんだい?人でも殺して奪い取ったか」
「?!」
商店街のババアが話しかけてくる
は反応したが俺は無視させた
もう関係ねぇ
こいつは汚くなんかねぇんだから
「まちな」
「っしつけぇな」
それでもしつこく構ってくるもんだから
俺はこいつの代わりにひとこと言ってやろうとした
のに
「銀さん、ごめん」
が俺の裾を掴んで謝ってきたから
俺は手を下げた
「…わりぃ」
「なんだい、そんな汚い女捕まえたってのかい、趣味悪いねぇ」
ババアが嫌味を言うが
俺は無視して去った。
守ってやらねぇといけねぇのにな
俺が余計なことしてちゃダメだよな
振り向かず歩くは
なんだか強く見えた。
____
自分は人殺し一家の娘、
家族はみんな捕まった。
今は死刑執行を待っている。
一人ぼっちになって
今まで、街中から嫌われてきた
それでもひとりで生きてきた。
家族を恨んで
生まれてきた自分を恨んで
誰にも愛されずに生きてきた。
__そう雨の中で、は俺に教えてくれた。
だから初めてだったらしい
誰かに優しく手を引かれているのも
雨が綺麗だと思えたのも。