第12章 頑張り屋 幸村
「傍に、いられなかったことへの、だ」
「は、…?」
「そんなに抱え込んでいるとは知らずに…っ」
離れようと少し体と体に隙間を作っていたを、ばらばらになってしまった心をかき集めるかのように乱暴に抱きしめた。
「ちょ、い、痛いっ」
「俺を、頼りにしてくれ…ッ!!」
「…っ、無理、だよ」
「何故ッ!」
苦しそうに、叫ぶように、幸村はに訴えるが、ただ彼女は首を横に振るだけで言葉を発そうとはしてくれなかった。
「心配で、壊れそうで、俺は、俺は、」
「…真田君て、心配性なんだね」
「心配性で済まされる感情ではないというのは、心得ているつもりだ」
「そ、っか」
もう互いにこう好きあっているは分かっていた。
だがここで甘えてしまったら、一生なにかに縋って行かないといけないんじゃないかとは不安に思っているのだ。
ここで幸村に甘えてもいいのか、甘えても迷惑しないのか、周りは嫌な思いをするか、しないか。どうしても他人の目が気になってしまうのだった。
「も…いいよ、帰ろう、私は平気だからっ」
「平気だというのなら、何故、この手を離さないのだ」
無意識に幸村の服を掴み、なぜか手が離そうとしてくれなかった。幸村のぬくもりを、無意識に体が求めていたのだ。
「…ごめん」
「離さずとも、俺は傍にいる」
顔だけ上にあげれば、額に何かやわらかいものが当たる。
「…変な真田君」
「殿の前だけでと誓おう」
帰り道、手を繋いで下校する赤面カップルがいたという。
END