第7章 いないいない 佐助 ★
小さい頃から、あなたは傍にいてくれた。
「さすけっ」
「はいはいっと」
どんなに小さな声で呼んでも、
どんなに人ごみに紛れていても、
必ず私を探し出してくれたし、見つけてくれていた。
「ねぇ佐助」
「なぁに?」
「呼んだだけ」
「なにそれー」
へらりと笑うその顔が、私は大好きだった。
ううん、今もずっと好き。
大人になった今でも、身分がはっきりした今でも
ずっとずっと、好きなのに
「佐助」
「どうしましたか、姫さん」
「…姫さんなんて止して」
そう言ってもあなたは呼び方を変えなかった。
それは忍びと姫である私との間にある高くて厚い壁。
私はそれをこわして共に歩んでいたかったのにあなたはその壁を飛び越えようともしなかった。
「…ねぇ、佐助ってば」
「なんでしょう?」
「…ううん、なんでもないわ」
「…じゃ、俺様忙しいんで」
冗談にも付き合ってくれないし、
必要以上に傍にいてもくれなくなった。
あなたとの壁は、あなたが超えてくれなければ私にはどうにもできない。