第5章 表情 小太郎
「ついてくんな!!」
彼女、は幼馴染の風魔小太郎がとても嫌いだ。
喋らない、表情も変えない、感情がわからない。
まるでこちらから一方的に話しているようで、初めこそ申し訳ないと思っていたが最近では苛立ちさえ感じていた。
「なんでついて来るの?!来るなっていってるじゃん!」
何度突き放しても、小太郎が離れるのは授業があるときだけ。
授業が終わればいつの間にやら視界にいるし、なんでだろうと考える間もなく腹が立つ。
「…ッ、子守のつもりなら、もう必要ないの、私達高校3年だよ?」
怒りで震える声をどうにか落ち着かせながら語りかけるも、小太郎は首をただ横に振るだけだった。
「進路も個人で決めなきゃなんないし、もう小太郎はついてこれないんだよ」
睨み付けてそう言い放っても全く動じる様子がない。
冷静な気持ちでこの場にいるのは小太郎だけだ。
「…晴香、いこ」
「え、でも風魔君は…」
「ほっとけばいいよもう、知らないっ」
親友の晴香の腕を引き、放課後の教室を後にした。
「…風魔君と、最近仲悪いね?」
「……別に」
「ううん、駄目だよ、幼馴染でしょ?」
「幼馴染だからって仲良くしなきゃならないわけ?」
イライラが抑えきれず、思わず晴香にあたってしまう。
だが晴香は怒ることもなく苦笑いをするだけだった。