第4章 破廉恥武将 幸村
私は「真田幸村」様にお仕えしているしがない女中にございます。
ですがつい最近、その主様から猛烈なる告白を受けまして、それを了承したばかりなのです。
私はとても嬉しかったし、ありえない、という気持ちで涙が沢山溢れて止まりませんでした。
その時、忍びの佐助様が近くへ寄ってきてそっと耳打ちをしてくださったのです。
「さんも大変だねぇ…」
と、その一言だけ残してどこかへ行ってしまわれたのです。
勿論主様が初心なのは心得ておりますし、その苦労も共にしてコレから生きて行こうと思っていたので佐助様からの忠告はそれ程気にしておりませんでした。
ですが、それの意図に気が付いたのはその告白から3日経った時でした。
「主様、でござます」
「…殿か!」
なかなか呼び捨ては難しいだろうと強制はしておりませんが、できるだけ呼び捨てでとお願いしたのはつい昨日の事。
「お茶をお持ちいたしました、少し休憩なされてはいかがでしょうか?」
主様はいつも政務をきちんとこなすしっかり者にございます。
確かに戦場では紅蓮の鬼や甲斐の若虎と恐れられているようですが、そんな荒々しい雰囲気ではこの場ではあまり見せません。
きっとこのに不安を抱かせ無い為なのでしょう、なんとお優しい方…!
「御手洗団子にございます」
「おおっでは…も、共に!」
ごにょ、と殿が聞こえたのはこの際どうでもいいのです。名前を呼んで下さることが私にとってはとても嬉しい事なのですから。
「い、いえ、私が共にというのはっ」
「某がいいと言っておる!さぁ!」
4本ある御手洗団子を手渡してくださる。蜜をたっぷりとつけてくださり、口の中へ運べば甘くて、団子の焦げがほのかな苦味を醸し出し、とろけるほどおいしかったのです。
「まぁ、本当に美味…」
主様が大好きなこの御手洗団子を打っている店は城下にあり、特別高級だとか、特別な素材を使っているとか、そういうことではないらしいのです。
この素朴な味わいがお好きらしく、そのお好きな団子を食しておられる主様の横顔は私の大好きなところの一つにございますよ。