第3章 ついてくる 佐助 ★
佐助を昨日と同じく突き飛ばして、陸部で鍛えてきた足を思いきり使った。
ここから家までなら余裕で走り切れるはず、ハードルなんてないんだから怖がることなんてないんだ。
怖がるべき存在は後ろに。
「おかあ、さッ」
声を繋ぎあわせて、助けを求めたのに、なんでだろう。
「…勝てると思ったの?」
そうだよ、なんで逃げ切れるかもしれないなんて思ったんだろう。
佐助は足が速いんだ、なんていったって、副キャプテンなんだから。
「や、やだッなんで、なんでよぉ…!」
「が好きだからだって」
「おかしい、こんなのおかしいからさ…っ」
やめよう、って言ったとき。
佐助は酷く悲しそうな顔をしてた。
「…不安なんだよ、が旦那の話を持ち出したり、友達の話をしたりすると、いつか俺のもとからいなくなるんじゃないかって」
「な、わけない」
「わかんないじゃん、女心って変わりやすいんだろ?」
違う、私は佐助だけが好きで、不安になってたのは私なんだってば
「可愛いから、ってさ、可愛いから…」
「だからって、昨日のはないじゃんッ」
「それは、がいけないんだよ」
「意味わかんない!!」
佐助は悲しそうな顔で、囁くように言った。
「旦那と、話してたじゃん」
「は…?」
ちゃん、って呼ばれた時佐助はとても嬉しそうな顔をしてた。
目を閉じそうになったとき、口づけてくれた。
なんでだろう、
わき腹が、熱くて痛い。
視線を落とせば、
紅い水たまりみたいなのが見えた。
END