第20章 臆病な 政宗
また、泣いていた。
「は、はは」
泣きながら笑って、苦しそうに咳をする。
俺にはもうそれを見て見ぬふりなんざできない
でも、勇気が出せないのは臆病な俺だ。
「…」
別に、重い病って訳じゃない。
俺の目の前で苦しそうに泣くはいたって健康そのもので、大きい病気なんてかかったことはない。それを俺はよく知っている。
俺らは、幼馴染だからな
「…どうした」
俺ができるのは、いや、俺がやっていいのはコイツに慰めの言葉をかけて立ち上がらせるまでだ。それからは、俺は手を出しちゃあいけない。
「嫌いって、もう、別れようって…さ」
はよく失恋をした。
初めて失恋をして泣きついてきやがったのは確か小学生のときだったか
その時は俺だって何にも知らないガキだったから、将来は俺がお嫁さんにしてやるからって…そうやって元気づけていた。もありがとうって笑顔だった。
いつからだか、そんな事は言えなくなった。俺はの恋愛対象に入ってないみたいだと気が付いてから。
それからはどんなにが傷ついて俺に泣きついてきても背中をさすってやって、勇気づけさせて、また次の恋へと応援をする。
こんなの俺らしくないってのは俺が一番よく分かってる。だが、を今以上に傷つけたくねぇし、俺を嫌いにならないでほしい。
女々しいと笑われた方がむしろ気が楽かもしれねぇが…
もう、こんなことを考えるのは疲れる。やめだ、やめ。
またこうやっての背をさすって、泣き止むまで愚痴を聞いてやる。
これが俺にできる精一杯。