第16章 突然変異! 政宗ver
「ッ!ッ!!」
彼は伊達政宗。私は。
信じられないかもしれないが、彼はなんとゲームの世界からやってきた(一応)武将さんだ。
「なにもう!煩いなぁ!」
政宗が来てからもう一年以上が経っていて、もうすっかり私の生活の一部に組み込まれている。帰る兆しは全くないし、まぁ帰るんだったら帰ってもらっても大丈夫。
政宗には好きな事をたくさんしてもらいたいし、私の我儘なんぞきかせたくない。
「お、おいっ!こっちこい!」
「私の優雅な朝を邪魔すんなっての!」
いつもならこの時間、私は会社に行くためにスーツを着こなし、新聞を広げ、優雅にコーヒーを飲んでいる時間なのに、何故か政宗は騒がしい。寝てるのかと思っていたのに。
「何ッ?!」
政宗に与えた一部屋は私の部屋と変わらないほどの大きさ。インテリアなんかは自分でためたお金で買ってもらっている。
え?働く場所?それは私の両親が営んでいる八百屋さんのお手伝い。
何故だかこの辺は外人さんが多く来るらしくて、お客さんにも外人さんが多い。その接待は政宗がやっているそうな。物覚えの良い彼だから、文法と正しい単語を軽く教えてみたらなんとまあ…ものの数時間で中学2年生までの文法を完璧にこなしてしまった。
くそう…私だってろくにできないのに…。
「人の事呼んでおいて布団被ってるって何?!」
勢いよくドアを開け放ってみれば、私の事を呼んだ張本人は布団をかぶって蹲っていた。
…まさかコイツは朝突然起きる男の子のアレの処理に困ってるなんてことはないだろう。そんな事で私を呼ぶならさっさと切り落としてしまいたい。
「はよ、なに、ねぇ、なに」
「お、驚くなよ…」
何をもったいぶらして。はよして、はよはよ
そう急かせば政宗がバサっと布団を落として私の目の前に仁王立ちした。