第15章 浮いた気持ち 佐助
「…な、なんで」
そんな、困った素振りなんていらないのに。
「知ってるから、私が知らないって思ってるの?」
浮気、してるでしょって、言えばいいのに言えなくて。ついつい遠まわしに言ってしまう。でも佐助くんはわかったみたいで、俯いてしまった。
「…言ってくれれば直ぐにでもわかれたよ」
こんなつらい思い、したくなかった。どこかで諦めてはいるものの、まだ私は佐助くんのことが大好きだから別れたくなくて、でも私が釣り合わないって言うのは最初から分かってたこと。
「ショッピングモールでも、公園でも、帰り道でも、私の知らない女の人と仲良さそうに腕組んで歩いてたし」
「…」
佐助くんは、何も言ってくれなかった。
「否定、しないんだね」
「……ごめん」
「別に、わかってたし」
どこかで、わかってた。佐助くんが女の人をとっかえひっかえしてるなんてさ。知ってる。付き合う前からそういううわさはあったし、ある程度覚悟してたつもりだったの。
でも…駄目。どうしても欲望が勝ってしまう。
「好きだったよ。佐助くん」
過去形の言葉なんて信用ならないし、必要ないけど、一応。
「本当に、誰よりも誰よりも、大好きだったよ」
さよなら
もう、佐助くんの声なんて聴きたくない。
大嫌いだよ
END