第1章 月見夜の灯火

流れる雲に見え隠れする満月を黙って眺め見る私達。
現世にいる時よりもはるかに大きく見えるその月は、
かつて人の子であった自分が見ていた月と似ていた。

暗い夜道を照らして、
隠れることなくずっと私を見ていた、あの月と同じだ。


私が死んだ後、月は隠れることができたのか。
……けれども、いま現世があるということは、きっと雨は降ったのだろう。
生きても死んでも、神の元へと進むのは、
定めなのか、縁なのか。


きっと私はいつまでも、知ることはないのであろう。