第1章 百日紅の夢
「まだ下着の上から撫でているだけだぞ。なのに何だこのだらしない濡れ方は」
「やぁっ!いやぁっ!もっ言わないでぇっ!」
あからさまに呆れた声で罵られる。
冷たい視線と執拗な言葉で体が熱くて堪らない。
下着の上から撫でられるだけではもう頭がおかしくなりそうだ。
ゆるゆるとなぞられる下腹部からの快感と時折弄られる胸の先端からの刺激に全てを支配されている気がする。
知らず知らずのうちに腰が揺れる。
冷たい視線が私の視線を捕らえて離さない。
頭の芯から痺れるような感覚と胸の内をジリジリと焦がしていくような欲望。
(……だめ…もっと…こんなのじゃ、足りない…)
快感で頭が働かない。
それが何をしてほしいのか理解できない。
部屋には自分の荒い息と濡れた音だけが響いている。
足りない―――それだけが頭を支配して、兵長を見つめる。
見下されている、普段であれば耐え難いその感覚にすらぞくりと背を這う感情は抗えないほどの甘美さを備えていた。
はぁ、と口から零れた吐息は熱く、甘えたような響きが含まれていた。
つぅっと首筋を舐め上げられ、耳元まで兵長の口元が移動する。
舐められた瞬間燃えるほど熱く、身体をぞくぞくと貫くそれは兵長の舌が通り過ぎた後に冷たく冷え、さらに私を熱くさせた。
「…欲しいのなら自分でねだれ」
耳に口を付けて低い声で囁かれる。
耐え難い快感が耳から背骨を通り腰にびりびりと響く。