第6章 初めての後ろ
『19時。○○駅』
「お待たせ。美月ちゃん」
ユウトがやってくる。
いつもの噴水に腰かけて、私は待っている。
今日はパスタ。
カウンターで二人並んで、カルボナーラを食べる。
「こないだの放送、すごくダウンロード多かったんだよ。
ユウトのおかげだね」
私は笑顔でお礼を言う。
ユウトもいつも通りの笑顔で、おめでとうと言ってくれる。
「美月ちゃんは何で、声優になりたいと思ったの?」
ユウトに聞かれ、昔のことを思い出す。
「恥ずかしい話なんだけどね、小学生の時、好きだった男の子に言われたの。
お前ブスだけど、声だけはいいなって。
その時はショックだったけど、声がいいなら声優になって、彼のこと見返してやるー!って思って。
バカみたいな理由だけど、今はその子に感謝だね」
ユウトの目が優しくなる。
「美月ちゃんの小学生の時か…。
見てみたいな、可愛かったんだろうね。
きっとその子も、本当は可愛いと思ってたけど、言えなかったんじゃない?」
「そんなことないよー。
ねぇ、じゃあユウトは何で俳優になりたいと思ったの?」