第3章 収録
「ユウトのおかげだよ」
私が言うと、ユウトは私の髪をかきあげて耳にキスした後言った。
「で、お礼に今日は、抱かせてくれるの?」
は、恥ずかしい…。
それに、耳にキスなんてされたら、身体が反応しちゃうよ…。
この席は失敗だったな…思いながら、ユウトを押し退ける。
「お礼は、別の形で…。
あ、あのね、今日はまた、相談があるんだ」
「ふーん。残念」
大して残念そうでもなく、ユウトが答える。
女の子には、不自由してないみたいだもんね。
何となく、胸がモヤモヤする…。
気を取り直して、私は続編が
決定したことを伝え
「秘密だよ」
とクギを刺して台本を見せる。
真剣な表現でそれをめくるユウト。
一回エッチしただけの関係なのに、何故だかユウトなら信用できる気がした。
「頑張ったからだね。おめでとう」
ユウトは面白そうに、私の話を聞いてくれる。
「そっか、で、また、練習したいってことだね」
「えっ、あっ、うん」
それきりユウトは別の話をし出して、アドバイスをしてくれるわけでもない。
でも私は、ユウトの話が楽しくて、とりあえず仕事のことは忘れちゃおうって気分になった。