第20章 丸ごと全部
ホテルに戻る途中ケーキ屋さんの前を通ったら、クリスマス前だから色とりどりのケーキがいっぱいだった。
生クリームに、大好きな苺……。あぁ、チーズケーキもある。チョコレートも。
美味しそう……。
不意に隣にいたユウトが、手を引っ張って店に入っていく。
「どれにする?」
「あれ?ユウト甘いもの好きだっけ……?」
「彼女のヨダレ垂らしそうな顔見せられて、買わないって選択肢はないでしょ」
うっ、目が笑ってる……。
わたしってば、そんなに物欲しそうな顔してたのかな……。
恥ずかしいけど、目の前に並べられたカラフルなケーキたちは、私に食べてほしいって顔してる。
これは、買ってあげないわけにはいかないでしょ。ふと、私の目が真っ白のふわふわの前で止まった。
タルト生地の上に、赤い苺が行儀よく並んで、その上にはこぼれ落ちそうなぐらい生クリームがたっぷり。
店員さんが営業スマイルで勧めるには「こちらの苺のタルト、別添えでチョコレートソースがついていまして、お好みでかけて召し上がっていただけます」とのこと。
大好きなスイーツたちのコラボレーションに、私は即決した。
「じゃあ、それ2つ」とユウト。
デザートなんて食べてるの見たことないないけど、最近疲れてるし、甘いものでも欲しくなるのかな~なんて、私は呑気に考えていた。