第19章 旅行
「チェックアウト間に合わなくなるよ!
早くシャワー浴びてきて!!」
ホックを外そうとしたユウトを両手で押し退けて、そのまま回れ右をさせてバスルームに押し込んだ。
「えーっ!美月ちゃーん!!」
甘ったれた情けない声が響いてくるけど、無視無視。
気を取り直して化粧を始める。
・
・
・
JRで太秦駅まで行って、少し歩くと小さな入口が見えた。
『映画村』っていう看板と、時代がかった瓦屋根に真っ白な壁。
一度行ってみたいねって、何度か話したことのある場所。
江戸時代の武士や町人に扮した人たちに混じって、忍者の衣装を着た子どもたちが風船の剣を持って走っていく。
「あーっ!!
仮面レンジャーだぁっ!」
幼い高い声に、ユウトの肩がビクンと反応した。……でも、子どもたちの視線は大きなポスターで止まっている。
ポスターには『本日、11時よりプリケアショー。12時から仮面レンジャーショー』
と飛び出すような文字が浮かんでいた。
「仮面レンジャーショーか……。ショーの間は、子どもに見つかるわけにはいかないね」
キャップを深く被り直しながら、小さな声で呟くユウト。
今や子どもたちと、ママたちの憧れ。私なんかとデートしてていいのかなぁ……。
考えないようにしていた不安な気持ちが、急に膨らんでくる。