第19章 旅行
無意識に下を向いた私を気遣うように、ユウトの右手が私の左手に触れる。
ハッとして見上げると、ユウトの顔の高さまで運ばれた左手に、柔らかい唇がキスした。
「また余計なこと考えてたでしょ。俺には美月ちゃんだけだよ」
王子様がかった行動と、惜しげもなく与えてくれる欲しかった言葉に、胸がキュンと締まる。
ユウトが好き……。
「もうすぐプリケアショーが始まります!
皆、ケアアップルとケアストロベリーに会いに来てね!」
子どもが走り去って静かになった村内に、放送が響く。
「ケアストロベリー。行こうか」
芝居がかった様子で、片眉を上げてユウトが笑う。
ケアストロベリーは、私が演じているアニメのキャラクター。
誰かに気付かれることなんてないのに、緊張して掌にじっと汗をかくのがわかる。
一番後ろに立ったままでそーっとショーの様子を伺うと、キラキラと目を輝かせる子どもたちが「ケアストロベリー!頑張れーー!」と手を振って叫んでいた。
ほっとして息を吐くと、肩にユウトの顎が乗って、「大人気だね」と耳に息がかかる。
恐らく真っ赤になった私の耳にキスして、
うっとりするような甘い表情で口を開く。
「美月ちゃんの演技、声、俺すごく好き。独り占めしたいけど、こんなにファンがいちゃできないね」
ちょっぴり拗ねたような声に、私の心臓はまた早鐘を打ち始めた。