第1章 初恋
それはまぎれもなく私の初恋だった。
小学生の頃はみんなで男子にバレンタインチョコを渡したことがあった。
中学生のときはグループデートみたいなのもしたことがあった。
でもそういうのとは全然違う。
誰かにチョコあげたい
とか
誰かとデートしてみたい
とか
彼氏が欲しいとかじゃない
わたしは彼が好き
彼をわたしだけのものにしたい
…
私に恋心というものが芽生えて、世界は変わってしまった。
それはとても美しく、とても恐ろしい世界だった。
相変わらず教室では一人静かに本を読んでいることが多い彼。
彼が一人でいる姿を見て、私は安心する。
でも不安になる。
彼が他の女に見つかってしまわないかって。
彼があんなに素敵なこと、他の誰かにばれて、他の誰かに連れていかれてしまったらどうしよう。
わたしのものにしたい。
他の誰かに見つかってしまう前に。
そんなことばかり考えてしまう。
…
「最近、口数少ないね。もしかして何か悩みとかある?」
実行委員の会議の後、一緒に下校中、彼に尋ねられる。
悩みは…ある。でも言えない。
「そんなふうに見える? 悩みとか…ないよ」
私は頑張って明るく笑う。
「そう? ならいいんだけど…。僕でよければ何でも相談にのるよ。
あ、でも人間関係とか恋愛相談とか…上手く答える自信ないな。
小説の書き方とかなら答えられるんだけど」
彼はうーんって首を傾げる。
「そんなピンポイントなことで悩んでないよ」
私は笑う。
「うん。でも困ったことがあったら僕に話してみて。解決出来なくても人に話してラクになることってあると思うから」
そう言って、彼は制服のポケットからスマホを取り出す。
「メッセのアドレスと電話番号交換しようか」
彼の提案に私は笑顔で頷く。