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僕の小説のモデルになってください

第1章 初恋


「僕はね…」

彼が話し始める。

「小説を書いているんだ。今はネットに投稿したり…だけど。
高校在学中にはコンクールに応募出来るような作品も仕上げたいと思ってる」

「そうなんだ! かっこいい」

思わず口から出た私の言葉がバカっぽくて恥ずかしくなる。

だって、身の回りで小説書いてる人なんていなかったし、初のリアクションなんだもん。

彼は首を傾げる。

「かっこよくは…ないんじゃないかな? 暗いとか思わない?」

「別に暗くないよ。好きなことカタチに出来るって素敵。それに…」

「それに…?」

「あっ! わたし、接続詞間違えた。国語苦手だから。あはは」

私は笑ってごまかす。

彼もふふっと微笑む。

それに…藍田くんは普通にかっこいいよって言いそうになった。

私には本当にどうしてもかっこよく見える。

彼のサラサラの黒い髪。
眼鏡の奥の綺麗な瞳。
形のいい鼻と…唇と…。
意外と高い背。
男の子っぽい手。

かっこいいとこがいっぱいある。

地味でクラスで目立たない彼が、こんなにかっこいいって知ってるの私だけかな。

私だけだったらいいな。

……。

私がぼんやりしてる間にクラス便りの概要が出来上がる。

「だいたいこんな感じかな。
後は鈴原さん、これを少し可愛くデコレーションしてくれるかな?
ハートマークとかキラキラみたいな女の子がよくやるやつで」

「うん。そういうのなら出来るよ」

私はにっこり笑って返事する。

「それと…クラスのみんなの前でプログラムの説明したりするのも鈴原さんやってくれないかな?
僕は人前で話すのが得意じゃないし、何より君のような明るくて可愛い子が話したほうが、クラスの男子もちゃんと聞いてくれると思うから」

「ふふっ。可愛いとか…そんな無理にほめなくてもやるよ」

私は笑って答える。

「可愛いよ、本当に」

彼は微笑む。美しい唇を美しく持ち上げて。



私の初恋はその日から始まった。

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