第7章 僕には似合うね
藍田くんと電話。
『ねぇ、今度いつ部活休み?』
「えっとー、来週の水曜休みだったかな」
『放課後、家においでよ』
「んー…どうしようかな…」
『制服のみなみにどうしても部屋に来て欲しいんだ』
「なんで?」
『ふふっ』
「ふふ…」
……
翌日、部活の帰り。着替えてるとき。
「ねぇ、みなみ。来週の水曜、部活休みでしょ? 男バスの1年とボウリング行こうかって話あるんだけど…行くよね?」
アヤに声をかけられる。
「あ…来週の水曜…。んー…ごめん。先に約束があって…」
「なに? デート?」
「そんなんじゃないよ…」
私は答える。
「そっか。でも、残念。川口くんと仲良くなるチャンスかと思って…。みなみがいてくれたほうが心強かったなぁ」
アヤが小声で残念そうに言う。
私も小声で話す。
「いいじゃん。頑張りなよ。川口くんてフレンドリーだから話しかけたらいけるよ」
「そっかなぁ…。自信ないけど…頑張ってみる」
アヤが小さくガッツポーズする。
いいな…。
…
その日、帰りの電車に乗りながら私は思う。
私の初恋の人がもし川口くんなら、私は今頃川口くんと付き合ってたのかな。
もしそうじゃなくても、あの文化祭の日、私が誰のことも好きじゃなかったら川口くんと付き合ったかな。
私が迷ったら、友達からでいいからとか言われたりとかして、
部活終わりに一緒にアイス食べながら歩いたりしたかな。
優しくてさわやかな川口くんと仲良くしたら好きになったかも。
私の好きな人はどうして藍田くんなんだろう。
この前、藍田くんに「僕のどこが好き?」って聞かれたとき「忘れた」って答えたけど…
私は多分本当に忘れた。
でも…
好きってことだけはなぜか覚えてる。