第7章 僕には似合うね
水曜の放課後、私は一人で駅までの帰り道を歩いてた。
「鈴原ー」
私の名前を呼ぶ男の子の声。
自転車に乗った川口くんに声をかけられる。
川口くんは自転車を押して私の横を歩く。
「あれ? ボウリング行かないの?」
私は川口くんに尋ねる。
「うん。鈴原が行かないって聞いたから」
川口くんはさわやかににっこり笑って答える。
私は愛想笑いしておく。
「鈴原、今からどっか行くの?」
「ううん。家に帰って勉強するの。せっかく部活休みだから」
私はなんとなく嘘の理由を言う。
「マジで? 鈴原ってそんな真面目な人だっけ?」
「最近、真面目になったの」
逆かな。私は不真面目だ。
「もしかして、鈴原の好きな人って頭いいの?」
「…うん」
私は頷く。
「だから勉強すんのか。もしかしてもう付き合ってる?」
「んー…ううん」
私は否定する。
「えっ、でもなんか微妙な返事。もしかしていい感じとか?」
「わかんない。そんなに気になる?」
私は笑う。
「そりゃ気になるよ。だって俺、まだ鈴原のこと好きだから」
「……」
私は返答に詰まって、とりあえず前を向いて歩く。
「困らせた? なんかごめんな」
川口くんが謝る。
「ううん…。あの…嬉しいよ。わたしなんかのこと…」
「わたしなんかってことないだろ。俺は鈴原のこと好きだよ」
川口くんがぶっきらぼうに、でもちょっと優しく言う。
「うん。ありがとう」
ちょっと微笑んで私はお礼を言う。
そのまま駅まで世間話して歩いた。