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僕の小説のモデルになってください

第5章 君は賢いね


藍田くんはやっぱり小説なんて書いてるからか、気のきいた冗談を言うっぽい。

でも多分、気がききすぎて私にはよくわからない。

アメリカンジョークみたいだ。

私がバカだから、よくわかんないのかな。

藍田くんが好きな人はやっぱり頭がいいのかな?

私、勉強したほうがいいのかな?

でもさっきバカな女も好きって言ってたけど…。

「ねぇ、わたし勉強したほうがいい?」

「どうしたの?」

「藍田くんは頭のいい人が好きなのかなぁって」

「そうでもないよ」

私は彼の顔を横からじーっと見つめる。

「ん?」

彼が私の顔を見て優しく微笑む。

「…なんでもない」

私もにっこり愛想笑いする。

「みなみ…僕の好きな人が誰かって聞かないね。気にならないの?」

彼が私に尋ねる。

んー…

「聞いても仕方ないし。悩みの種がひとつ増えるだけ」

私の答えに彼はふっと微笑む。

「みなみは賢いね」

わーい、ほめられた…って違うか。

「僕はね…みなみが男に告白されたって聞いたとき、相手が気になって仕方なかったよ」

「どうして?」

「さぁ…嫉妬かな」

「してないって言ってたじゃん」

「嫉妬している自分を認めたくなかったんだ」

「……」

私には彼の気持ちがわからない。

彼の話はいつでも、本当のことのようで、本当のことじゃないみたいに聞こえる。

それは私には判別出来ないし、もしかしたら彼自身にも出来ないのだろうか。

「わたしは嫉妬してもらいたくて話したの」

「そっか…」

彼は黙る。

「…もしかして藍田くん、好きな人誰? って聞いて欲しいの?」

「えっ…? そういうわけじゃないけど」

「わたしの知ってる人? 相談にのろうか? 協力してあげようか?」

「……」

彼はしばらく黙る。そしてゆっくり口を開く。

「みなみ…その人と僕が付き合えばいいと思うの…?」

「うーん…。付き合えばいいっていうか、まあ仕方ないかな…みたいな…」

彼はまたしばらく黙る。そしてボソッと言う。

「…君の知らない人だよ」

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