第3章 君の泣き顔、好きだよ
「お待たせ」
待ち合わせの駅で私は藍田くんに声をかける。
「ううん、大丈夫。来たばかり…ていうか、みなみ…私服姿可愛い…」
藍田くんが嬉しそうにニコニコする。
「え、ホント? ありがとう」
ほめられて私は嬉しくなる。
遊園地だから動きやすくて可愛い服を念入りに選んできたんだ。
「なんかいかにもリア充って感じで輝いてる…。僕なんかと歩いて平気だろうか」
彼はうーんって首を傾げる。
「ふふっ、おおげさ。藍田くんもいけてるよ」
「えっ、いけてるってことはないんじゃないかな…」
「うん、そうだね。普通だよ。大丈夫」
「えっ、そんな正直に言わなくても…」
「あはは…」
可笑しくて私は笑う。
「ふふっ。じゃあ行こうか」
彼も笑う。
そして私の手を握る。
「う…うん」
私はちょっとびっくりする。
だけど頷いてついていく。
…
遊園地では本当にカップルみたいにデートした。
お化け屋敷でも当然のように手を繋がれるし、ふざけて「きゃーっ」て抱きつかれたりもした。
正直、リアクションしにくい。
本当のカップルなら「もう〜やめてよぉ」とか言うんだろうけど、なんか逆に言いにくい。
「楽しい? みなみ」
お昼ご飯のホットドッグを食べてるとき、彼に尋ねられる。
「うん。楽しいよ」
私の答えに、彼はにっこり微笑む。
「よかった。僕だけ舞い上がってるんじゃないかって心配してたんだ」
「ふふ…藍田くんも楽しい?」
「すっごく楽しいよ」
彼は満面の笑みで言う。
私も微笑み返す。
でも心の奥では、これっていったいなんなのかなぁって思うけど。