ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第7章 悪風
断末魔のような悲鳴が響き、ショー・ボンコは血を吹いて倒れた。
ローは心臓を無造作に捨てると、リンをそっと抱き上げる。
「戻るぞ」
ハートの海賊団は、船へと戻った。
「い”っだい”」
「我慢しろ」
手術台に乗せられ、リンは治療を受けていた。
「…暫く腹に内出血の痕が残るな…あのクソ野郎…」
「別に支障はないよ。痕が残っても」
「お前の腹を見るたびにあいつを思い出すなんてお断りだ」
「いや、まず私の腹を見ることなんてないだろ」
「おれがお前の腹をいつ見ようとおれの勝手だ」
「Σなんだそれ…痛っ…」
突っ込みも痛みのせいで迫力のかけらも無くなってしまった。
ローはそんなリンを見つめ、優しく頭を撫でた。
「お前が持ってた本、少し読んだが…お前との記憶の誤差があるようだな…」
「!…そう。それがね」
自分にあった出来事を全て話した。
ローは、腕を組みながら聞いていた。
「…で、ロー達が来てくれたの」
ローは始終何かに思い耽るような表情だった。
「ま、でも過去のことだし。今さらどうでもいい」
明るくそう言ってみせるも、ローの表情は晴れなかった。
「泣きたい時は泣け。お前はもう感情に素直になっていいんだ」
「ロー…」
ローはリンの頬を優しく撫でる。その手は、いつかの手と変わらず、大きくて温かかった。
「ありがと…でも肋骨が治ったら泣く。絶対今は痛い」
「そうしとけ。だがおれのとこで泣け」
「Σえ」
「1人でなんて許さねぇ」
「…わかった」
へなっとした笑みを向けるリンにつられ、ローも口元が緩むのだった。