ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第4章 木の芽風
「みんなは?」
「さぁな。ログはあと半日程で溜まる。明日の昼には出るからな。用を済ませに行ったんだろ」
なるほど、と頷く。
「ローはいいの?」
「あ?」
「用事」
「おれは朝お前と済ませただろ」
「そうじゃなくて、ね?」
あぁ成る程、こいつの言う用事ってのは性処理のことかとローは理解する。
しかしそれが少し気に食わなかった。
「ひとつ言っておくが、男が全員常に盛ってる訳じゃねぇんだ。覚えとけ」
そういってアカリの頭をコツンと小突いた。なにすんだと牙を剥くものだと思っていたローは、そうしてこないリンに驚いた。
「…ごめん」
予想外の反応だったため、ローはリンを見る。
「今までそういうのしか見たことなかったから、私もまだまだ人生経験浅い証拠だな…ってちょっと何してやがる」
ローは素直に反省するリンに胸を(いろんな意味で)打たれ、腕を引いて抱き閉めた。
幸い、人がいない砂浜に出たところだったので羞恥心は起こらなかったが、何か得体の知れない別の動悸にリンは戸惑っていた。
「お前、本当に何なんだ」
「それはあの時と同じ意味か?」
あの時とは、出会った日のことである。同じことを聞かれたのだ。
「…まぁそれもあるが、今は別の意味もある」
「じゃあその漠然とした質問に新たに加えられた別の意味ってやつを教えて」
「断る」
「Σなんで」
じたじたともがくリンをさらにきつく抱きしめ動きを封じ込めたところで、一つの感情に気付いた。
おれは、こいつが好きなんだと。
誰にも芽生えなかった感情が初めてこいつによって芽生えたということか。と。
しかし口には出さずに、自分の腕に収まっているのが気付くまで待とうと決心する。
「その方がおもしれぇ…」
「は⁈」
「ククッ、なんでもない」
さっきから意味深な言動ばかりするローにもやもやしながらも、未だにその感情に知らんぷりをするリンだった。