ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第2章 潮風
シャチの言葉にローを見る。
「心配、して、くれたの」
「さぁな」
そう言うと、席に着いてしまったロー。
彼を目で追っていくと、クルー達全員の顔が眼に映る。
見回すと、みんな笑顔だった。
食堂の中は綺麗に飾り付けされ、あの時シャチがここに向かわせないようにした理由が分かった。
自分のために準備をしていてくれたのだと。
自分のために。
そう思った瞬間、目に涙が溜まる。抑えきれずに、頰を滑り落ちた。
「リン?」
「私のために、こんなことまでして…バカでしょ」
「仲間が元気なかったら元気にする。当たり前だろ」
ペンギンが言うと、クルー達は頷いた。
リンはどんどん溢れてくる涙を抑えきれず、震えた声で一言。
「……ありがとう」
悲しいんじゃない。嬉しくて泣いている自分に少し驚く。
自分のために何かをしてくれるなんて思ってもいなかった。
ここが、新しい居場所。
そう心から思えたのだった。
「ほら、早く座れ。料理が冷める」
ローが言って、席に座り、長い夜が始まった。