ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第1章 突風
この海に出るものは、強いものばかり。そう、この女でさえ、賞金首なのだ。
「あー…めんどくさい」
グランドラインのある島で悪態をつく女が一人。
「私なんで追いかけられなきゃいけなくなったの…まぁ捕まればいいんだろうけど・・いや良くない」
ブツブツと自問自答しながら座って空を眺めている。そして今いる場所は昨夜たどり着いた知らない島の街の一番高い建物である時計塔の頂上。
「とりあえず食料調達でもしなきゃ…」
と言い、気だるそうに立ち上がると、その建物から落ちた。と言うより飛んだ、の方が正しい。
そのまま地面に叩きつけられるのではなく、スイーッと体を宙に浮かせている。
所謂、能力者である。
所変わって同じ島の裏にある岬。
「船長!ねぇ、あれ鳥かな?」
どう見ても熊なクマが話しかけた船長はだるそうに空を見上げる。
「あぁ?そんなの見りゃ……あれは人か…?」
つられて空を見上げたキャスケットをかぶっているクルーも驚かないことなどできなかった。
「人っすねぇ…飛んでる⁈」
今度は『PENGIN』と書かれた帽子をかぶったクルーが口を挟む。
「シャチ…お前とべるか?」
「飛べねぇよ‼︎つかなんで俺に聞くんだよ‼︎」
と、二人はあることを思い出し、顔を見合わせる。
「「あ!!もしかして…」」
バッと振り返って両者が目に入れたものは、先刻のだるそうな目ではなく、生き生きとした、しかし極悪人の様な目をした船員だった。
「…おもしれぇ」
ニィと口に輪を描かせた船長、通称死の外科医は、陸地に降りた。
「ちょっと出てくる」
クルーたちは船長の行動の真意など知るはずもなく、ただ見送るだけだった。
「久々に人多いところ」
ガヤガヤと朝の市場の空気に浸りながら店をみて回る。
フードを深くかぶって。
「いらっしゃい!新鮮だよ!!」
「とれたての魚だよー‼︎」
市場の活気付く雰囲気が好きなリン。一人でニンマリと満足しながら歩いていると通行人にぶつかった。
「あ、ごめんなさい」
「…見つけた」
「へ⁈」
腕を掴まれサッと暗い路地に引き摺り込まれる。
「え、あの⁈」
見上げると、そこには長身の細身で帽子を深く被り大きい剣を担ぐ男。
「お前だな。懸賞金2億ベリーの”風使い”リンは」