ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第17章 繋風
「麦わら屋!!!」
「トラ男!!ケムリン~~!!そっちにいたのか」
ルフィたちと無事合流し、島内にいた子供たちや海軍の面々などをトロッコに乗せる。その手伝いをリンはしていた。体が小さい子達をまとめて風で浮かせてトロッコに乗せる。負傷していてもそれくらいは余裕でこなせる力がついていた。
(サクの修行の方がえげつなかったしな…)
過去の不思議な知人を思い出し、同時に規制がかかりそうな鍛錬の地獄絵図を思い出しげんなりした。
しばらくすると何やらルフィと言い合いをしていたローが近くにきた。
「おい、無理するな…」
「大丈夫。これくらい朝飯前ってやつ」
「…話したいことがたくさんある。あと抱きてぇ…」
「ブッ!!!急に欲望をさらけ出すな!!!!」
リンは盛大に吹き出して汚れた口の周りを拭う。その様子をローがまじまじと見ていた。
「短いようで、長かった」
そういうローに、リンも小さく微笑んで、口を開いた。
「ホントだよ!何年越しだよ!物語よりリアルの方が時間経ってんじゃねーか!!どういうことだよ!!!」
「…すぐ治療してやりてぇが、もう少し待ってくれ」
ローの困惑した顔に、リンは我を取り戻した。
「アレだ、なんか、乗っ取られてた的な感じだから、傷のせいとかじゃないから…」
フッ、とローは小さく笑い、スっと左手を構えた。
パッと目の前の景色が変わる。
皆から見えないところに、ローの能力でリンは移動させられた。
ワイワイと声が聞こえるが、目の前にある琥珀の眼差しから逃れられない。
待ちわびた、愛する人が目の前にいる。最後に見た時より、ちょっと精悍な顔つきになって。
そんなことを考えていたら、ずい、と顔が近づいた。
「悪ぃが、これから忙しくなる。かなり負担をかけると思うが、それでもまた俺のところに来てくれるか」
「ちょっと強くなった分、気弱になっちゃったの?私、船長様から拒否権ないって言われてるんですけど〜?」
からかうように言うと、ローも小さく苦笑した。
「二度とお前を離さねえ」
「離さないで、ロー」
リンが手を広げると、ガバッとローが抱き締めた。
「キスは落ち着いてからな。キスだけで留まれる気がしねえ」
「…色気振りまきイケメンのくせに、発言に色気が皆無だな」