ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第15章 暁風
日がまだ登らない頃、リンはすでに行動を始めていた。
城に忍び込み、兵士やメイドたち、城内にいる王家につかえる者全員に、ナディーヌに使った技で思考を少しいじっておいた。
町も朝の市場などで活気づいてきた頃、貴族たちも動き出す。ナディーヌの呼びかけで、セレモニーの前にささやかな朝食会を開くから参加しないかと事前に集めていたのだ。この朝食会はボンコはもちろん、国王であるナディーヌの父でさえ知らなかった。
リンはメイドに扮してナディーヌの近くに立つ。
集まった貴族たちは皆まるまると肥えていた。
「皆さま、ようこそお越しくださいました。この朝食会の後に控えるセレモニーにて、皆さまにお力を貸していただきたく、お呼びした次第でございます」
ナディーヌの挨拶に、貴族たちはざわつく。
「西と東とを分ける壁を、なくそうと思うのです」
ナディーヌがそういった瞬間、会場はさらにざわついた。
その隙に、会場全体に風を吹かせる。
すると、ナディーヌの話に真摯に耳を傾け始めた。
「平等な国を、私は作りたいのです」
ナディーヌが話し終えると、どこかから拍手が起こる。それはだんだんと増えていき、しまいには全員が拍手をした。
「皆さま、ありがとうございます!!」
こうして朝食会は成功した。今後の政治資金提供の話を持ってくる貴族も現れたほどだった。
(・・・疲れたけど、効果が想像以上だ)
リンは静かにその場から姿を消した。
服を着替え、城の屋根に上ると、すでに多くの人々が集まっていた。下に集まっている人々に見つからないようにセレモニーが始まるのを待っていると、子電伝虫が鳴った。
「はーい」
『リン、おれだ』
「サボ?どうしたの」
連絡をするという予定はなかったのでリンは驚いた。
『いいか、お前が今からやろうとしていることは、とんでもなくでかいことだ。多くの国が貧富の格差で戦いになっている。何十年かけてやっと成し遂げるような規模のことを、お前はやろうとしている。お前の能力がどれだけすごくても、限界があるはずだ。力の効果も。だから無理はするなよ、絶対にだ』
サボの重みのある言葉を聞いたリンは、笑顔になっていた。
「ふふっ、ありがとサボ。なんかすごくできるって思えてきた」
『Σいやおれの話聞いてたか?!』