ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第14章 業風
「リンにしては、考えたわね」
「ロビンさ…」
「「確かに」」
「サボとコアラまで…なんだ…この褒められてるのか貶されてるのかわからない感じは…」
少し不服な顔をしてリンは話を戻す。
「そういえば忘れていたが、ショー・ボンコの父親って海軍のおえらいさんじゃなかったんだな」
「ええ、少し前に除隊したわ。軍の金に手を付けたとかで」
コアラがメモ帳を見ながら言う。
「あの時のおばあちゃんが言ってたろくな事しないってのは本当に正解だったな…」
ふと思い出したことが、どんどん他の事にまで波及してしまう。あの時、1人で乗り込んで想定外の頭痛に襲われ体を痛めつけられた時、皆が、ローが、助けに来てくれた。かなり前のことになるが、ハートの海賊団の一員として過ごしたあの日々は鮮明に覚えていた。
「リン…?」
「あ、あぁ、そう、ボンコだ。ボンコの父親はどんな人間か、なんて詳しくは調べ…」
「調べたぞ。どうしようもない奴だな」
リンは革命軍の行動力に感心した。
「よし!じゃあ利用させてもらうに越したことは無い。で、あとは3人にやってもらいたい事があるんだ」
「「「???」」」
リンは不敵な笑みを浮かべた。
そして3人にやってもらいたい事というのを説明し、解散した。
リンは城には戻らず、顔を隠しいかにも旅人だという風を装って、適当な宿屋に泊まることにした。
充てられた部屋のベッドに寝転び、木の天井を見つめる。
思えば長い1日だった。
しかし、これから先はもっと過酷な日々になるだろう。
そう考え、ため息が抑えられなかった。しかし、これが終われば会いに行ける。
帽子の裏にポッケを作り、綺麗にたたんでしまっておいた手配書を出す。そこには相変わらず悪人という言葉が良く似合う笑顔を浮かべた大好きな人がいた。
「…ロー、再会する時は私も強くなって、ローの力になれるようになっていると約束する」
手配書を置き、自分の胸に手を当てる。ポッカリと空洞になったそこには本来ならば心臓がある場所。しかし今心臓は無い。
心臓が戻る時には…
そんな事を考えながら、リンは眠りについた。