ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第14章 業風
乗ることは最後になるかもしれない海軍の軍艦に用意された部屋で、リンは頭の中を整理していた。
まず、自分の国シャーネル島の状況について。
戦争から1年後、勝利した国王軍は壁を作り西と東に島を分けた。城はその中心に置いた。
それから、西は強制的に過酷な労働をさせられる貧民、東は身分が高い貴族が優雅に暮らす、そんな国になっていた。
「さて、どうするか…」
そんな時、ドアがノックされる。
「はい」
「失礼します」
入ってきたのは、コビーだった。
コビーとはマリンフォードからG-5へ移る前に仲良くなった。頂上戦争の時、戦いを止めようとした。しかしそれができなかった自分。だかコビーが止めてくれた。なんの関わりもないが、ただあの時に戦いを終わらせるという共通の思考を持ち、実行してくれた彼に「ありがとう」と声をかけたのが始まりだった。
「本来なら、乗船するときに挨拶をするべきなのですが書類整理が終わらなくて…すいません」
「いやいや、別に気にしないで。今日はメッポいないの?」
メッポとは、ヘルメッポにリンがつけたあだ名である。
「あぁ、彼ならガープさんのところで修行を続けています。リンさんが辞めると聞いて彼も挨拶に来たいと言っていたんですが、今いいところまで覇気の使い方のコツを掴みかけてて」
「はは、メッポやっとか。それでコビーが来てくれたんだ」
「ええ。リンさんには沢山お世話になりましたからね!」
「そんなにお世話してない」
冗談混じりに言うと、そうでした、とコビーも笑った。
「僕らはただ投げ飛ばされてるだけで…でも今はそれなりになってきましたよ!」
「うん、見ればわかる」
服の上からでも、場数を踏んでいる物ならわかる。鍛えられた肉体が隠れていることを。
「ボク、リンさんは海軍に必要な人だと思うんです」
コビーが突然神妙な顔で話始めた。
「どうして、そう思う?」
「リンさんは、正義がなんなのかを示してくれる気がして」
リンは目をパチクリさせ、吹き出した。
「私には無理。それに、未来の海賊王に大将になるって堂々宣言しておいて、示してくれる、なんて他人任せなこと言っていいの?」
「う゛…」
コビーは返答に困ってしまったらしい。