ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第13章 朝凪
この日のG-5は、普段よりも少し元気がなかった。
朝の食堂は活気であふれる筈なのに、しんみりとした空気が流れる。
「…ほんとに行っちまったんだな…」
「明後日って昨日言ってたよな…?」
元気のない、G-5らしくない雰囲気。
たしぎは困ったように眉を寄せた。
たしぎ自身も、ちゃんと別れの言葉が言えなかったことを悔やんでいる。たかが一年だけと言っても、それくらい大好きだった。
「おい、何テメェまでシケた面してやがる」
「スモーカーさん…」
突然聞こえた上司の声にも、いつもの元気な声は戻らない。
「…すみません、でも唐突過ぎて」
「別に永遠の別れって訳じゃねぇんだ。会いたきゃいつでも会える」
そう言って食堂を出ていくスモーカーの背中を、たしぎはじっと見つめた。
(一番辛いのは、スモーカーさんかもしれない)
スモーカーは屋上に行き、潮風に当たっていた。
また別れの挨拶もできずに離れていってしまった。
そんなことを思いながら、葉巻の煙を燻らす。
『また明日ね!スモーカー!!』
『あぁ。わかったから前向かないと転ぶぞ』
いつまでも手を振る少女に、苦笑しながらも応じていたあの日、それは突然に告げられた。
『スモーカー君、君は移動になった。今直ぐに支度してくれ』
また明日、と約束したのにその明日はもうなくなった。
「あの時はおれだったが…今回はお前が行っちまったな……」
その独り言は、空に登っていく煙と共に消えていった。