ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第13章 朝凪
「おい、リンちゃん泣いてるぞ?!」
「あー!!スモやん泣かせたな?!!!」
「いくらスモ少将でもそれはダメだぞ!!」
ワーワーと騒ぐ海兵達に、スモーカーはため息をついて手のひらを額に当てた。
「ぐすっ…ふっ……ぇっ……も……スモーカー大好きっ……ふぇっ」
「?!」
突然の言葉に、スモーカーは葉巻を落とした。
「「「?!?!」」」
海兵達もあんぐりと口を開けて黙った。
「ぐすっ…ぐす……オムライス冷めちゃった…もぐ……でも美味し……」
そんな中、中断していた食事を再開し始めるのだから、リンらしいとリン以外の全員が思ったのだった。
あの後ペロリと完食したリンは、部屋に戻り荷造りを開始した。と言っても、特に無いのですぐ終わった。
シャワーを浴び、タオルで体を拭く。脱衣所にある洗面台の鏡に映る自分の姿を毎日確認しては、その場所を撫でた。
それは、ローの能力でぽっかりとあいた心臓のある場所だった。
毎晩これを確認して、眠りにつくのが習慣になっていた。
しかし今晩はそれでも眠れそうにない。
リンは静かに部屋を出て、見張り台となっている屋上へと向かった。
「…あれ、リンさん?」
そこにいたのはたしぎだった。
「たしぎちゃん、今日は眠れないからここにいてもいい?」
「ええ、もちろん」
たしぎとも仲良くなっていたリン。たしぎからはたくさんの話を聞いた。主に刀の事であったが。
「今日はまたどうして眠れないんです?」
「…お別れが近いからかな?」
「あ……」
たしぎは俯いてしまった。
「リンさん、絶対行かなきゃならないんですか?その……国へ」
「うん。なんか、そうしないとかなり危険だって話をされて。そんな話信じてないけどね」
「………そうですよね…」
たしぎは儚げに笑った。
「私はドジでトロくて……いつもスモーカーさんに怒られてばかりで…でもリンさんが励ましてくれて……私本当に勇気付けられました」
リンは記憶を思い返してみる。
たしぎは確かにトロくてドジで可愛らしかった。