ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第13章 朝凪
一方、ロー達は無事に逃げ、女ヶ島に停泊していた。未だ目を覚まさないルフィを看ながら、ジンベエの話を聞いていた。
「ーーまだ監獄の中にいる時、ある海兵がふらりと現れてな…女じゃったか…エースさんとも仲良くなって、戦争ではルフィ君を助けてくれていた。じゃがワシが最後に見たときは錠をされていた。おそらく海楼石…」
「……そんな変わりモンの海兵がいるのか…」
ローは腕を組んだ。ジンベエは「そうじゃ!」と何かを思い出したように声を出した。
「その海兵は今は訳あって海兵をやっているといっておった」
ローはそのことを聞くとドクンと心臓が強く脈打った。
「その海兵の名は…」
「リン、か……?」
「そうじゃ。指名手配もされていたと思うが…今はどうなんじゃろうか……彼女にも恩がある」
「そいつは他にどんな話をしていた」
ローは少し前かがみになる。
「そうじゃの……彼女は実は海賊の仲間になったが、仲間の命と引き換えに軍に捕らわれたと言っておった。仲間のために、と何度も繰り返しておった。自分を愛してくれる大切な人たちだと……」
ジンベエはふとローの異変に気付いた。
眉をひそめるロー。その表情は悲しげだった。
「…つかぬ事を聞くが…まさか」
「あぁ、そいつの言う海賊はおれ達のことだ」
ジンベエはそれを聞くとパン!と額に手を当て、「すまん」と言った。
「もう少し気にかけておくべきだった…」
「別にお前が気にすることじゃねぇ」
「じゃが…」
ローはフッと笑った。
「あいつはあんな場所で死なねぇ」
「……そうじゃな」
ジンベエも笑った。
夜、ローはルフィとジンベエのケアを終え、自室にある扉付きの棚を開ける。そこにはトクンと脈打つ赤い心臓があった。
ローはそれを取り出し手のひらに乗せ、口づけをした。