ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第12章 夜風
その時。
カシャン!と音がして、違和感のする足首に目を向けると、海桜石が片足にされていた。
「見つけたぞ風女ァ!なんで貴様が将校になってんだぁ?!まぁいい。それよりもよくもあの時は!!!」
剣を振りかざすその男は以前島で鉢合わせたショー・ボンコであった。
「しねぇぇえええ!!!!」
力が入らず逃げることもできない。
ここまでなのかと思い、目をぎゅっと瞑る。が、痛みもなにもない。
うっすらと目を開けると、そこには正義と書かれたジャケットを着た背中があった。
「おいテメェ、何してやがる…」
「ス、スモーカー…⁈」
「こんな時に仲間内で何してやがる」
「ヒィィイイ!!!」
逃げ足だけはやはり早い。
そんなことを思いながら、振り向いた男に目を向ける。
「大丈夫か?」
それは、何年か前にもかけられた言葉と同じ声色で、安心する声で、葉巻の香りが鼻をくすぐる。
リンは、安心と疲労から、意識を飛ばした。
様々な花が咲き誇り、そこに住まう人々は皆笑顔だ。
しかし自分は浮かない気分だった。その理由は、母様か忙しく、会えないからだった。
でも、ある人物を見つけて走っていくと、足音に気づいたのか葉巻を地面に落とし靴のそこで火を消す海兵。
その海兵に飛びついて、一言
「今日も怖い顔!」と笑いながらいったのだった。
ハッと気づく。気絶したのが一瞬だけでよかった、と安堵の息を付く。どうやらスモーカーと呼ばれていた海兵が倒れたところを支えてくれたらしく、ぺたんと座り込んだ状態だった。
「立てるか」
手を差し伸べられ、おずおずとその手を取り立ち上がる。その時。
「うわぁぁぁぁあああああ‼︎‼︎‼︎‼︎」
叫び声の主は、ルフィだった。
先ほど聞こえたエースの声。もうエースの風は感じられない。
無意識にスモーカーの手を強く握る。
風が寂しそうにリンの頬を撫でた。しかし、戦いはより一層激しさを増すばかり。