ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第2章 潮風
結局、そのまま酔い潰れた者が多く、毛布やら布団やらを掛けてやっている。
食器の片付けもコックの遠慮する声も聞かず、下っ端ですから。と明朗に笑って見せる。
片付けが終わったあと、お疲れ様、とコックがコーヒーを入れてくれた。
「もう一仕事たのみたいんだが、船長の部屋にもってってくれねぇか?」
「わかった」
船長、ローの部屋の前に行き、ノックをする。
「ロー、コーヒーもってきた」
「入れ」
ローは椅子にどっかりと座り、分厚い本を読んでいた。
「医学書…?」
「ああ」
コーヒーを机の上におき、邪魔をしないようにと部屋を出ようとして背中を向けたとき、腕を掴まれる。
「はい?」
「話がある」
「なんでしょうか」
向き合う形になる。
すこしの間があって、くっと喉を鳴らすロー。彼独特の笑い方だった。
「お前のことは前から知っていた。変な奴だと思っていた」
「ちょ、知ってたって手配書くらいでしょ。変な奴ってひどくないか…それ」
「いや、お前は変な奴だ」
「…」
「まぁ座れ」
ソファを目線で示されたので、ゆっくりと腰を掛ける。
「実際会って、噂通り女だとは思わせない奴だと思った」
「噂?」
「お前がかっこいいってな」
「え」
「一つ前の島の話だが、お前がまた来てくれないかとそわそわしていた女がたくさんいたぞ」
「…コーネルス島?」
「あァ」
リンはため息をついた。
「あの島には、階層があった。下の階層の女は道具のように扱われて、大抵病気で死んでいく。それを根本的に直してみただけだよ」
そう話すと、ローは笑った。
「ククッ」
「…笑うところか今の」
「いや、やっぱりお前は変だ」
リンは数秒ローを凝視した。
「…もう変なやつでいい」
「クククッ…」
呆れたのと諦めたのと脱力感からソファの背もたれに背中を深くあずける。
「で、持ち場とか指示するんじゃないの」
「ああ。足りてるからな」
「じゃあ何、戦闘要員か?」
「そんなしょっちゅう戦うわけじゃねえ」
リンはローの考えていることがわからなかった。
「…じゃあ私をこの船に乗せた本当の理由はなんだ」